いきなりだが、俺は今免許合宿に来ている。
通いとなるとめんどくせーし、俺の性格上行かなくなりそうだし、これを口実にだりぃバイトも休めるしってことで、
高校から大学にかけての長い休みを利用して合宿に参加している。


で、だ。
合宿だよ?
約二週間の共同生活だよ?
そりゃ少しは期待するじゃん?
あ、何がって?んなもん…


可愛い女の子との出会いに決まってんでしょーが!!


幸いなことに、俺は初日にそれをクリアしてしまった。
レクレーションでたまたま隣の席になった女の子。
黒髪長髪、清楚系(見た目はね、見た目は…。)でかなり天然…というか電波だけど、笑った顔がすっげー可愛い。
同い年、しかも出身が近いってことで仲良くなって、今じゃ連れも一緒に毎日飯食ったりする仲になった訳なんだけど。
…なった訳なんだけど。



「…なあ、ヅラ」

「ヅラじゃない桂だ。何だ?」

「や、その台詞はもういいって。この短い期間に何回聞いたと思ってんの!?ってそんなことじゃなくって!あんさぁ…や、やっぱいいわ」

「何だ、はっきりしない奴だな。それでも男か!言いたいこともはっきり言えんのか!?
そんなのだから最近の若者は草食系男子などと言われるのだぞ、悔しくないのか!?」

「(うぜぇ…)じゃあ、言うけどよ。………この状況はさすがにまずくね?」



そう、実は今俺がいるのはヅラの部屋だったりする。
事の発端は、何気ない会話だった。合宿生活だし、自然と互いの寮の話になって。
女子寮と男子寮の違いに愕然となって(当然ながら住む場所は男女別だ)、特に深い意味もなく「女子寮どんなんか見てェ」的発言をしたことは確かに覚えている。

が、だからと言ってまさか本当に自分が女子寮に入り込むことになるなんて思ってもみなかった。
バレたら強制送還だぜ、わかってんの俺!?


…しかもさー。


これが、男女複数人でわいわいだべってんなら、まだマシだった。
かなり怒られはすんだろうけど、男女会っちゃダメなんて規則はないんだし、場所を考えなさいで済むはずなんだけど…。

幸か不幸か、今この部屋に


二人っきり


なんだよね・・・。


「なんだ、お前が女子寮を見たいというからわざわざ管理人が見回りにこない時間帯を見計らって連れてきてやったというのに。
俺がお前の靴隠すのにどれだけ苦労したと思ってるんだ!他の寮生に会わないようにどれだけ苦労したと思ってるんだ!?」

「いちいち恩着せがましいんだよお前は!何、その感謝されても文句言われる筋合いはないみたいな態度!?文句ばっかだっつーの!
てかな、普通部屋に男連れこんだりしねーだろ、しかも2人っきりで!!」

「…2人で会うののどこが悪いというのだ?坂本と陸奥だってよく2人で会っているではないか」

「や、そりゃそうだけどさ…」


『2人で会うののどこが悪いというのだ?』


真顔でそういう事言うのやめてほしい。
…期待しちまうじゃねーか。


「…でも、あいつらの場合広場とか食堂とかさ、公的な場であってだな、さすがにいきなり密室ってのはだな、」

そうそう、物事には順序ってもんがあるもんな。うん。

この状況だと、段階一つ踏み外しかねないもんな。うんうん。


「つまり、何が言いたいかっつーとだな」

「なぁ、あの2人最近いい感じだと思わんか?陸奥も満更ではなさそうだし、付き合うのも時間の問題だな!」

「って俺の話聞けよ!!なんなのお前、人の恋愛には敏感なくせに、なんで自分のことにはそんな鈍感なの!?」


俺だって結構わかりやすくアピールしてきたと思うんだけどな…。
あーなんかもう疲れてきた。ため息しかでねーよ。てか、なんでこんな奴好きになったんだろ。

パ●ラッシュ…僕もう疲れたよ。


「…なんだ、さっきからおかしな奴だ。いったいどうしたんだ?熱でもあるんじゃないか?」



***



そう言ったヅラの表情は、飽きれたようだったが、それとは裏腹に声色は、とても心配していた。
ヅラの白い、繊細な指先が俺の頬に触れたかと思ったのも束の間、視界は、彼女で覆われた。
それが、彼女の額と己の額が触れ合っていることだと自覚するのに、時間はかからなかった。


「……!!」

「熱はなさそうだな。気分は悪くないか?」

「…あぁ、」

そうは言ったものの、俺の熱は上昇する一方。
ヅラにまで聞こえてしまうのではないかというほど、心臓の音は激しく、大きくなっていった―――。




ってなにこれ!?
どこの少女漫画!?俺どこの乙女!?

ねーよ!!

…や、でも今はそんなこと言ってる場合じゃないかも。
ヅラ近いし、手離してくんねーし、なにより胸が…



あー、もぅ・・・


頼むからもってくれよ、俺の理性。









kan.tenの未麻ちゃんにいただきましたアアアアア!!!
未麻ちゃんと免許合宿中に電話してて、俺が「銀桂で免許合宿パロディ書いてよ」って言ったら見事な胸きゅん小説が…はうああああ幸せ!!
本命は土桂にも関わらず、ありがとう!!お腹いっぱいです。

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