だけど思うのは是非ばかり、そういつか此の世に戻ったときのため。
判るよ、此処は普通じゃないことぐらいは。俺は莫迦じゃない。
それでも此の舌が喘ぐたび、赤く染まってお前を誘うたびに死にたくなる瞬間がいつだってどこかに潜んでいるんだ。背徳などお前には縁がなさそうだな。
だからそうやって、平気で俺を抱けるんだ。心底満足げに。

「いやだ」
「なにが?」

ほらそうやって、俺の意見なんか聞かずにその白い手は裾を割る。お前は自分の手が嫌いだと言うけども俺はとても綺麗だと思う。
だからその手を違う白でなんて汚したくないんだ。俺の羞恥で真っ白に染まる、なんて。
「ちょ、やめろ」
「なに、じゃヅラがしてくれんの」
「なんでそうなる、莫迦」
莫迦はお前だ、と云って手が俺の一番触られたくない所に直接当てられて動かされて、ああもう身動きがとれない。
恨んでなんかないさ、お前を。俺が恨むのは天人とお上だけだ。それと自分自身。綺麗な自尊心が昔は在った。
でももう、お前が其れを全部奪ってしまった。返せなんて云わないけど、其れを持った儘何処かへ行くな。どうせ何処かにばらまくんだろう。それだけは、厭だ。
「あー…セックスしたい」
「ケダモノ」
上がった息がみすぼらしい儘に肩を蹴る。その衝撃であっさり射精した。何だかアホらしくなって、乱れた着物を直した。
「ヅラ」
「ヅラじゃない桂だ」
「続き」
誰が、と言いかける前に体重が掛けられて床に押し倒された。何て卑怯な。抵抗とか、したくないわけじゃない。でも身体がもう諦めてしまっている。
もしかしたらもう、此奴の云う儘にしか動かないのかもしれん。それも悔しかった。
だけど仕方のない。鬼が求めるのならそうがままにすればいい。
いたいいたい、と言っても聞こえない振りをしよる。熱が俺を殺しに来る。多分俺は敵より先に、此奴に殺される。でもそれも仕方のない。
ああそうだ、恨むわけがない。こんなにも大事に、鬼のことだけを想っているのに。
だけど判らない、触られるたびに生まれる孤独感と距離感。白夜叉からいっそ離れて仕舞いたい。
びりびり電気が来て、一瞬だけひとつになった。此の刹那が積み上がればいつか答えが見えるというものならばいい。
意味を呉れ銀時。お前に抱かれ続ける意味が欲しい。
其れが無理なら神にでも縋ろうか。果てしない痛み。どうか俺をまともな人間に戻してください。それか此奴と同じ鬼にしてください。
汗と精液に濡れた敷物の中で、鬼の腕の中で祈るのはいつも同じことであるのに。
朝起きれば未だ俺は、どちらにも成り切れていない化け物でしかないのだ。
ああ、いっそ誰かが咎めてくれればいい。





真っ白な以下略と対な感じ
ややこしなぁこのカップルは...でも結局ラブラブ