Z組にはか行の生徒が7人いた。
1列がちょうど7人編成で、窓際から3番目の列はか行の名字の生徒で綺麗に埋まる。
入学式直後の真新しい教室に、名簿順に理路整然と並べられた真新しい机と椅子。麗らかに晴れた4月の正午前。
何もかもが新鮮で、教室の空気自体がどこかふわふわと浮かんでいる。
坂田銀時は残念なことに、教卓の真ん前という最悪な席順だった。
育て親である吉田の姓を名乗ればよかったか、と後悔しながら固い椅子に着席する。
名前も知らない初対面同士の寄せ集めの空間は窮屈以外の何物でもなくて、
人見知りをしない性分の銀時は何気なく隣の席のクラスメイトに声をかけようと左に身体を寄せた。
「一番前の席って、最悪じゃね?」
左隣のか行の名字を持つ男は、男にしては長すぎる髪をしていた。
男だとわかったのは学ランを着ていたからで、もし私服だったら女だと思っていたかもしれない。
急に話しかけられて驚いたのか、長髪の彼はびくっと身体を反らした。
「あ、ああ…」
どもりながら答えた彼の視線は、はたと銀時の髪を捉えてそのまま暫くの間固定されていた。
生まれつき真っ白で、しかも天然パーマの自慢とは言えない髪を見つめられ、やっぱ変に抵抗せずに黒染めすべきだったかな、と銀時は後悔した。
「あのぅ…これさ、別に染めてるわけでもパーマ当ててるわけでもねぇから。全然不良とかじゃないし、うん」
「へっ!?…あ、そうなのか…すごいな」
「そっちの髪は、ストパーってやつ?」
「え…?いや、何もしてないが」
「地毛でその髪ってのも中々すごいね。俺ら正反対の髪質じゃね?足して2で割れば丁度よかったかもな」
「髪を足して2で…?そんなことどうやってできるんだ?」
嫌味ではないことは彼の真剣そのものの眼差しですぐにわかったが、あれもしかしてこの人変な人なのかな、とも同時に銀時は思った。
あ、いやモノの喩えで、と言いかけたときに、教室の前方の入り口からグラサンをかけた小汚い教師が現れたので銀時は口を噤んだ。
しかしはたと基本的な情報を交換していないことを思い出し、小声で、
「あ、俺、坂田銀時。よろしくね」
と左隣の同級生に告げる。
「桂小太郎だ。銀時、か。髪の色と同じだ」
桂と名乗った小綺麗なクラスメイトは、初めてにこりとぎこちなく微笑んで見せた。
その笑顔があまりに作り物じみていて、銀時は言い表しがたい、どこか寄る辺ない気持ちを覚えた。
入学して初めて話した人間とその先も親密に交流するということは往々にして少ない。
とりあえず、肩慣らしにコミュニュケーションを図る目的で皆声をかけるからだ。
初日に桂に声を掛けてきた坂田銀時も、例外ではない、と桂は思っていた。
実際銀時は天然のリーダー気質で、のらりくらりと暮らしていてもどこからか人が集まってくる、所謂人気者タイプだった。
高校生活が始まり数週間で、銀時はあっという間にクラスの華となった。
休み時間には留学生の神楽、ジャニーズ顔で既に上級生から持て囃されている沖田総悟、
クールな二枚目でこちらは同学年の女子から人気のある土方十四郎らと何やら喧嘩紛いの戯れを日々行っている。
真面目で大人しい桂とは明らかに属性の違う男で、共通点といえば同級生であることだけである。
桂は桂で同類を集めてしまうらしく、協調性の明らかに欠如したいかにも不良といった風体の高杉晋助と、
快活でまるで欧米人のように振る舞う坂本辰馬らに何故か気に入られ、よく話すようになった。
しかし、席替えが早々に行われたにも関わらず、昼時になると必ず坂田銀時は桂の下へやってきた。
「一緒に食おー」と気怠げに、いちご牛乳とパンを常備して、二人して銀時が見つけた屋上の抜け道を通って、銀時は桂と一緒に食事を摂った。
桂は不思議だったが、嬉しかった。
会話はあまりかみ合わないが、高杉と違って行政や国の施策への不満に相づちを打つこともなく、
ボンボンゆえの坂本との価値観のギャップに首を傾げることもないそれは桂にとっては楽しかった。
それに、だ。
「なに、また見てんの?」
彼のふわふわとした綿菓子のような銀髪が桂は大好きだった。
屋外に出ると陽光を透かして、きらきらと雨の糸のように光る。たまに触らせてもらうこともあった。
銀時も桂の癖のない真っ直ぐな髪を羨望に満ちた目を携えながら意味もなく触った。
桂は銀時と、放課後二人でぶらぶらと当て所なく散歩をしたり、学校の近くの色んな店に寄り道してみたりするようになった。
中学の頃は寄り道が好きではなかったが、銀時とのそれはとても楽しかった。
銀時は呆れながらも、桂が宇宙怪獣ステファンというキャラクターのグッズがある店に入りたがると付いてきてくれた。
桂も甘味はあまり好きではないが、銀時が寄りたがると喫茶店に入った。
趣味はまるで違えど持ちつ持たれつ、共通の話題に花を咲かせることはなくても何となく話が途切れることはなかった。
お互いのことも色々話した。
銀時には両親がなく、孤児院が性に合わず問題ばかり起こしていた彼を引き取ってずっと育ててくれた先生がいて、
その先生も若くして病気で亡くなっていること。
今は先生の残してくれた遺産で一人暮らしをしていて、学費や生活費をそのお金とバイト代から捻出していること。
国語は得意で数学と英語は嫌い。一番好きな食べ物はいちごパフェ。
本人は否定しているがオカルト系が苦手、昔から剣道をしていてかなりの腕前であること。全て包み隠さず銀時は話してくれた。
そんな間柄の友達を桂は持ったことがなく、そのおかげで毎日が楽しかった。
桂も銀時に何でも話した。
小学生の頃に父親を事故で亡くしたことも、今は母が自分のために毎日必死で働いてくれていることも、
誰にも話したことのなかった長すぎる髪の理由さえも、全部話した。
「へえ、お父さんがねぇ」
「ああ。俺の髪が好きで、母さんより俺の髪結いをしてくれてたな。
長いときっと綺麗だ、って、でも男の子だから将来はスポーツ刈りかぁ、って残念そうに言っては母さんにバカにされてた」
「うん。お父さん、正しかったじゃん」
「え」
「綺麗だよ、ヅラの髪。俺も長い方が好きだなぁ」
親しく話すようになって早々に「ヅラ」なんて長髪を小バカにした渾名をつけたくせに(しかもそれをクラスに定着させた張本人のくせに)、
銀時はそんなことを言った。
初めて銀時のアパートに遊びに行って、余りの汚さに強制的に掃除を敢行して一息吐いた後のことだった。
自堕落だし、勉強はしないし、毎日パン食で栄養管理はなっていないし、失礼なことばかり言うのに、桂は銀時のことがとても好きだった。
その感情に比例して、桂は銀時と日に日に親密になっていって、全くタイプが違うと思っていたはずなのに、
銀時はいつのまにか大親友と胸を張って呼ぶべき存在となった。
「あの、これ…土方くんに渡してくださいっ」
放課後、別のクラスの顔も見たことのない女子から呼び出され、これはまさか告白というやつかと思いきや銀時はそんなことを言われた。
つまりは出汁に使われたのだ。
厄介事を頼まれると口では面倒臭がりつつもつい抱え込んでしまう性分が災いして、何かと他人の揉め事を解決したり、仲介役を頼まれたりしている内に、
ちょっとした武勇伝みたいなものまでが小さくない尾ひれつきで学校中に知れ渡り、銀髪に灼眼と変わった容姿をしていることもあって
銀時は不本意にも有名人になっていた。そのせいで、こんな色恋沙汰の飛び火を受けることにもなってしまったのである。
例によって銀時は、彼女の精一杯の思いの詰まったメールアドレスとメッセージの書かれた紙切れを受け取った。
実際は、両隣に立っていた友人らしき女子の視線が「断ったらこの学校にいられなくしてやる」と物語っていたからだが。
それにしても古典的な手法を使うな、と銀時は思いながら、部活に勤しんでいるはずの土方に紙を渡すため野球部の練習場に足を運んだ。
「よっ、このイケメン」
丁度土方はグラウンドに出てきたところで、銀時の姿を認めると訝しげに眉を顰めた。
不機嫌そうな顔になるとより眉と目の間隔が狭まって、鋭さが増す。こういうところが女子は好きなのだろうか。
かわいらしい花柄のメモを渡し、事の次第を伝えると土方は何とも複雑そうな顔をした。
普通ならば舞い上がるとまではいかずとも、嬉しがりそうなものだが。
「何?嬉しくねーの?あれか、またかってうんざりしてるとかそういう贅沢な悩みか」
「ちっげーよ。…あんま、こういうの気乗りしねーだけだ。……総悟のヤローがいろいろうるせーし」
「うっそマジで?俺だったらがっつくけどなー。あーあ、誰かかわいー子銀さんに話しかけてきてくんねーかなぁ」
土方は相変わらず暗い顔をしていたが、訳を聞くのも無粋な気がして、じゃーね、と踵を返した。
正門に桂を待たせているのだ。
「面倒かけたな。部活終わりに何か奢ってやろーか、総悟と飯行くつもりだし」
「あー、今日ヅラうち来るから今度でいいや」
「またか?お前らほんと仲いいな」
どこか呆れた調子で土方は言い、じゃあ明日な、と言って準備体操の輪の中に入っていった。
自分だって沖田くんと仲良しなくせに、などと小首を傾げながら銀時は桂の待つ正門へと足を速めた。
「お邪魔します」
桂は律儀に挨拶してから、銀時のワンルームのアパートに入った。
今更そんな挨拶を交わす仲でもなく、同居人もいないというのに、桂は毎回欠かさずにお邪魔しますと一言添えた。
それは別に銀時に距離を置いているとかでは全くなく、単に幼い頃からそう躾けられてきたから、取れない癖のようなものなのだ。
銀時もそのことを十二分に理解していて、特に何を言うでもない。
桂のおかげで適度に清潔な狭い部屋で、銀時はいちご牛乳を、桂は勝手に熱い日本茶を煎れた。
土方に呆れられるのも当然なくらい、桂は頻繁にこの家を訪れていた。
銀時もたまに招かれて桂のマンションに行くことがあった。
母親は遅くまで仕事に追われているので、料理から洗濯まで家事は全て桂が行っており、そのせいでインテリアにも多少彼の趣味が滲み出ていた。
まるで桂も一人暮らしをしているようだった。しかも銀時よりも真っ当に。
何の気なしに、銀時は先程起こった他愛もないことを桂につらつらと話した。
桂はふんふんと頷く。話している内に、銀時ははたと、桂とはこういった色恋の話をしたことがなかったなと気付いた。
というより、何となく聞きたくなくて避けていたのだ。
桂も桂で、銀時の口から聞かされる他人のものとはいえ少し色の付いた話に多少の違和感を持っていた。
「ヅラは、何かそういう浮ついた話とかないの」
「ヅラじゃない桂だ。ない、というかあったことなんてない」
「へえ、まあ俺もだけど」
桂も銀時も、互いが男としての経験値がゼロだということに何となく可笑しくなって笑った。同時に安堵もしていた。
それは先を越された悔しさとかそういう類のものではなくて、相手を今のところ自分が独り占めしてもいい権利があることに対しての安堵だった。
まるで、気になっている異性に向けるような。そしてそれを銀時は素直に口にした。
「よかった。何かわかんねーけど、ホッとした」
「うん。俺もだ」
相手の気持ちが今の自分と寸分違わず同じであるということが、どうしてだかわかった。
「銀時に彼女ができたら…祝福してあげたいけど、寂しいな」
ぽつりと桂が何気なく零した本音に、銀時はどくんとひとつ大きく心臓が上下するのを認めた。
反して、桂の表情はそう言った傍からふっと翳った。
「…親友の幸せも望んでやれんなんて、俺は最低だな…」
「最低なんかじゃねーって!」
銀時はつい大声で否定した。
桂が自分を否定する言葉なんて、間違っても聞きたくはなかったのだ。
いつも真っ直ぐで清廉潔白で、銀時にはないものをたくさん持っていて。
こんなにも一人の人間に惹かれることがあり得たのかと驚くくらい、銀時は桂のことを尊敬し、同時にとても好きなのだ。
そう、好き。だけど、どういう種類の好意なのだろう。
今までは、人間として親友として桂を好きだと思っていた。
だが、今目の前で銀時の言葉に驚いて大きな黒目がちの瞳をぱちくりさせている桂を凝視していると、何だかその答えに違和感が生じてきた。
「…ありがとう…銀時」
銀時の赤い瞳にいつになく真剣に見つめられ、桂は少しこそばゆいような感じを覚えた。
心臓の内側を、猫の爪にきゅっと掴まれたような痒い感じ。たぶん自分は、あろうことか照れているのだろう。
でも、どうして?自分なんかを肯定してくれたから?それにしては何だかいたたまれない。
銀時の整った顔を見るのが恥ずかしい。だから桂はそっと顔を逸らした。
しかし、銀時は折角逸らした顔をまた元の位置に戻した。
「…え、あ」
銀時自身、自分でも何をしたかよく理解していなかった。ただ、桂の綺麗な顔をもっと見ていたかった。
次の瞬間にした行為に、銀時自身が一番驚いた。桂の、親友の形のいい唇にそっと自分の唇を押しつけたのだ。
つまるところ、キスをした、それもたぶん初めての。
銀時の次ぐらいに桂はキスに驚いていたが、けして拒否だとか、嫌だという感情が湧いてこないことに関しては驚いていなかった。
寧ろごく自然なことと受け止めていた。ひどく気まずい沈黙が流れ、濃度の濃い時間に絡みとられて二人とも動けない。
だが何となく、どちらからともなく、二人はもう一度唇を重ね合わせた。
何分初めてのことで、上手く息が続かずに一度離し、今度はしっかりと見つめ合って、銀時は桂の後頭部を引き寄せて、桂は銀時の首に腕を巻き付けて、
まるでベタな洋画のようなキスをした。
にゅる、と生温かい何かが桂の口内に忍び込み、一瞬肩を反らしたがすぐにその正体が他ならぬ銀時の舌で、
そしてこの行為はディープキスだとかフレンチキスだとかいう類のものだとすぐに気付いた。
しかしどうしていいものかわからずに、桂は辿々しく初めて味わう他人の舌の動きに精一杯合わせることにした。
唾液がこぼれ落ち、口端から伝っていく。とんでもなくいけないことをしているような感じがして、銀時も桂も、ひどく興奮した。
その証拠に、二人の抱き合う力がぐっと強くなって、段々加重されていって、重心を失ったように二人して床に頽れた。
「ん、ん…っ…んー!」
「ん、ぷは、ごめ、苦しかった?」
「あ、ああ…ちょっとな、息ができんかった…」
顔を完熟した林檎よろしく真っ赤にした桂の綺麗な顔を銀時はどくどく唸る心臓を感じながら見つめ、
そして桂自身が自分の息子と同じくらい大きくなっていることにふと気付いた。
「ヅラ、…ズボン脱いで」
「えぇっ!?」
桂は眉を寄せて信じられないといった素振りをしてみせたのだが、渋々といった調子を装いベルトを外し、ファスナーを下げた。
下着を下ろすことには流石に抵抗があるようだったので、銀時は勢いに任せて桂のトランクスを取りさらった。
そして何のためらいもなく、自慰をするときの手の動きで桂を扱いた。
「あっ、あ、ばか!なに…っ」
「ヅラ、俺のもシて?…そんで、おあいこだろ」
銀時のねだるような声に絆された、と言えばそうなのだが、抵抗できずに桂はいつのまにか下着姿になっていた銀時の下半身にそっと手をやり、
銀時のするように自分とは比べものにならないぐらい大きいソレを同じように扱いた。
必然的に、二人とも呼吸が荒くなって射精感が近付く。手の中の相手のと、相手の手の中の自分のと、同時に感じていると頭がおかしくなりそうだった。
この荒ぶった状態でさっきのキスをしたら、きっと酷いことになる、と思うや否や二人は深い口づけを交わしていた。
手と舌を同時に動かすことって、こんなにも難しいのかと経験値のない二人は思った。
「う…!あ、ぎ、ぎんときっもうやば…」
「いーよ、手、に出して」
「だめだめだめっ、きたない!はなせ、あ、あうっ!」
銀時よりも先に桂が達した。その衝撃で、桂の手の動きは中断された。
いきり立ったままの銀時の若い雄は、びくんびくんと血管が浮き出るほどに痙攣して熱を保有している。
感じたこともないほどの快楽はまるで魔物のようで、銀時を次の行為に急かした。
流石に噂通りにアナルセックスをしようとはまさか思わなかったが。
「ヅラ…あのさ、口で、してみて?俺もあとでしたげるから、お願い」
「はー…はー…えぅ…」
少し逡巡した後、桂は銀時の言う通りにした。怖ず怖ずと先端をぺろりと舐め、ちょっと顔を顰めた。
「やっぱ不味い?」
「…なんかよくわからん、まずくはない」
そう言うと桂は、今度は亀頭を口に含んでから、頭を控えめに竿の中間あたりまで動かした。
「う、わー…きもちー…ちょっと、上下に頭動かしてみて?」
「ん、んぐ…こぉか…?」
たまに歯に当たってしまい少し痛かったが、それより何より桂の口の粘膜の柔らかさに包まれたままの上下運動は凄まじい快楽を銀時に連れてきた。
元々限界近くまで張り詰めていたので、比較的すぐに銀時は射精感を覚えた。
「ヅラ、ありがと、もう出そう…」
「ん…わかった…」
口の中に何とも言えない独特の味が広がり、桂はお茶が飲みたくなったが先にティッシュを取って遣った。
身体中に火が点いたように熱い。心臓が獣みたく暴れ狂っている。
桂はお座なりに身なりを整えてから、銀時の広い胸板に子供のように抱きついた。
何だかそういう甘えたことがしてみたくなったのだ。
「ぅお、どした」
「何となく……」
「……あの、うん、ごめんな何か。でも、俺ヅラと…こういうことできて嬉しいし気持ちよかったよ」
「謝るな…俺も、だから」
顔は胸に押しつけているので見えないが、呟いた桂の声があまりに小さかったのできっと真っ赤な顔をしているんだろうと銀時は推測した。
きっと今自分の胸からは、尋常じゃない鼓動音が鳴り響いている。
どうしてこうなったんだとか考える隙間もないくらい、銀時は満たされた気分だった。
それは桂も同じで、だからこうして恋人がそうするように銀時に甘えているんだろう。
「…銀時、好きだ」
「…俺も」
囁き合うのは睦言。その真偽が今はわからなくても、構わなかった。
ただ惹かれて、響き合って、今こうしていることが、若い二人にはよほど重要なことなのだ。